『あなたがいてくれたから』絵本のあらすじ、感想 絵本心理学でレビューする
絵本は子どもの為だと思っていませんか。
そんなことはありません。
大人が読んでも、心を揺さぶられたり癒されるものがあります。
絵本作家ヨシタケシンスケさんも、子どもの頃読んだ絵本でも大人になって読むと、
その年齢に応じて感じるものがあります、
とおっしゃっていました。
今回ご紹介する絵本もそんな絵本の中の一冊です。
目次
『あなたがいてくれたから』作品情報
『あなたがいてくれたから』
文 コビ・ヤマダ(Kobi Yamada)
絵 ナタリー・ラッセル(Nathalie Russell)
訳 高橋久美子
出版 パイ・インターナショナル
発行日: 2020年07月20日
ISBN: 9784756253743
表紙には、くまの親が子どもに地球義のような風船を差し出す様子が描かれています。
よくある親子の意図コマのような光景で、とても微笑ましく思えます。
絵は色鉛筆のようなやわらかい、やさいいタッチで描かれています。
絵本の前見返し部分には「ありがとうの気持ちをあなたに贈ります」という一文があります。
そしてその下に、メッセージを書き入れられるようになっています。
誰かに感謝の気持ちを伝えるのにぴったりの絵本です。
人は誰かがそばにいると、それだけで安心できます。
それは、奥さん(ご主人)かもしれません。
お父さん、お母さんかもしれません。
恋人や友人かもしれません。
困っているとき、苦しいとき、そんな時に思い浮かべる人がいませんか?
その思い浮かべた人のことが書かれた絵本が『あなたがいてくれたから』です。
『あなたがいてくれたから』あらすじ
この絵本はストーリーではなく、誰か(相手)に語りかける内容になっています。
私がこの絵からイメージした相手はお父さんかお母さんですね。
どちらかというとお父さんでしょうか。
「あなたがいてくれたから」私は・・・
このフレーズで始まり言葉が紡がれ、
このフレーズが続きます。
あなたがいてくれたから
私は考えることが好きになりました
きっと、あなた(お父さん)が絵本を読み聞かせてくれたり、お話をいっぱいしてくれたのでしょう。
なので私(こぐま)は、頭の中でいっぱいイメージして、もっと知りたいと思ったら、いろんな本を読んだのでしょう。
だから、私(こぐま)は考えることが大好きになったのですね。
あなたがいてくれるから
自分が思うより ずっとたくさんのことが
できるのだと気がつきました
絵が上手く描けなくても、上手だね、なんて言わなれかった。
ただ笑顔で見守ってくれた。
だから私(こぐま)はいっぱいいろんなことをやってみることができた。
上手くいかないこともあったけど、できることもわかったんですね。
そのほかにも、あなたがいてくれたからいろいろなことを学べたことがわかります。
苦手なことも大丈夫だと思えた。
チャレンジすることが楽しいってわかった。
進むべき道はひとつじゃないってわかった。
失敗は成功の元だって思えるようになった。
いつだって助けて欲しいと言えた。
そして、
あなたがいてくれたから
私は私を信じてみようと思えた。
大切な人に届けたい感謝の気持ちがたくさん詰まっています。
『あなたがいてくれたから』の言葉はなぜ心に届くのでしょう?
この絵本の言葉は、多くの人の心に届くでしょう。
ではなぜ、絵本の言葉は心に届くのでしょう。
『あなたがいてくれたから』で書かれている言葉の一つ一つは、自分が欲しいと思っている言葉ではありませんか?
こんなふうに言って欲しい。
こんなふうに思っていた。
こんな風に言いたかった。
その気持ちが絵本の中で語られていたのではないですか?
この、自分に言って欲しいと思う言葉のことをTA心理学では「ストローク」といいます。
専門的な言葉で表現すると、ストロークとは、「存在認知の一単位」と言っています。
ちょっと難しい表現ですね。
わかりやすく言うと、普段のあいさつや、表情、しぐさのひとつ一つのやりとりがストロークになります。
「こんにちは」と言えば「こんにちは」とニッコリ笑って挨拶をする。
これだけの単純なやりとりでも、ニッコリ笑って挨拶を返されると、とてもほっこり、嬉しい気持ちにしませんか?
この自分を認めて認知してもらうことが、ほっこりすることであり、それが心の栄養になっています。
この心の栄養がストロークなのです。
身体に栄養が必要なように心にも栄養が必要です。
この心の栄養となっているのがストロークです。
心の健康を維持するためには栄養が必要であり、人は心の栄養を求めます。
その心の栄養であるストロークを、この絵本『あなたがいてくれたから』は与えてくれるのです。
ストロークについての詳しい説明はこちらを参照してください。
ストロークとは? 心理学(TA)で心の栄養と言われるサプリメント! 健康維持のための受け取り方と与え方
『あなたがいてくれたから』に込められた想い
あなたがいてくれたから
私は考えることが好きになりました
例えば、この場面。
私=子ども、あなた=お父さん を私はイメージしました。
このフレーズから、お父さんが子どもの疑問にしっかり向き合って答えている姿を連想しました。
子どもはお父さんに見守られているという安心感があれば、色々なことに興味を持つようになります。
この親の見守りもストロークです。
子どもの行動を受け入れ認めてあげる。
大丈夫、。安心して。しっかり見守っているよ。
そんなメッセージを伝えていることがこの場面から想像されます。
そのほかの言葉からも、お父さんがしっかり見守ってくれていて、子どもは安心していたことが伝わってきます。
それは言葉だけでからではなく、絵からも伝わってきます。
『あなたがいてくれたから』では、10数ページにわたって感謝(愛情)が詰まっています。
その全てではなくても、この場面がグッときたと思うものがあるでしょう。
感謝(愛情)は言葉だけでなく、非言語でも伝わります。
非言語の方が伝える情報は大きいかもしれません。
『あなたがいてくれたから』で語られるストローク
この絵本は子ども目線で語られています。
その子どもの気持ちを自分への想いと思えば、あなたに届きますよね。
子どもからの感謝の言葉をきけば、ほとんどの親は心を動かされるでしょう。
フッと笑顔がこぼれたり、涙腺が緩むかもしれません。
このように、『あなたがいてくれたから』では1ページ1ページがストロークになっています。
この絵本を読むことで心の栄養であるストロークを得られ、心の健康を整えてくれます。
人によっては、三つ星レストランで食事をしたのと同じ、もしくはそれ以上の満足感、充実感があるかもしれません。
自分が十分に心の健康状態を保っていれば、周りの人にも分けてあげられます。
ストロークを分けることは、幸せのお裾分けになります。
子どもに自分の想いが伝わっているのが分かると、親は嬉しいですよね。
子どもからの感謝の言葉には、驚き以上に嬉しさがあり、幸せな気持ちに包まれます。
『あなたがいてくれたから』は、読者に幸せの場面をイメージさせます。
もし、この絵本を誰かに読んであげれば、聞いている人に対してストローク(愛情)を届けられるでしょう。
聞いている人は、読んでいる人の声の調子や速度、雰囲気などから絵本の思いを受け取ります。
その思いとは、読んでいるのがお父さんであれば、お父さんからのストローク(愛情)として、
お母さんであればお母さんからのストローク(愛情)として受け取ります。
『あなたがいてくれたから』は感謝を届ける絵本
大人であれば、この絵本を読んで自分の両親に思いを巡らせるかもしれません。
大人になると普段感じることが少なくなった親への感謝が、いっぱい思い浮かべることができるかもしれません。
そして、その思いはそのまま自分自身への栄養となっていきます。
作者は後書きで、
「私を育ててくれた家族先生仲間全ての人たちに感謝の気持ちを込めて」
と書いています。
感謝の気持ちがこの絵本全体に流れる気持ちなのがわかります。
感謝の気持ちは、基本的なストローク(心の栄養)のひとつです。
心の栄養が不足していると感じたら、この絵本を手に取ってみてはいかがでしょう。